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2011-02-27

地域とつながる宅老所 下村恵美子さん講演

宅老所の草分け的な存在である「よりあい」を営んでいらっしゃる下村恵美子さんの講演を聞いてきました。宅老所は「住み慣れた生活の中で、通うことも泊まることも気軽にできる小規模で家庭的な」場所として、地域のお年寄りを支える存在です。下村さんは介護保険の始まるずっと前の1991年に始められました。
日中は14,5人のお年寄りを顔なじみのスタッフやボランティアさんで支えています。小規模多機能居宅介護事業所は、こうした宅老所がモデルとなり2006年から制度化されたものです。

宅老所「よりあい」はとても地域の人から頼りにされ、安心感を与える存在になりましたが、その一方で事業所だけで地域の高齢化を支えることに限界を感じていらっしゃいました。そこで、7年前から地域を巻き込み、一緒に考えてもらうことを始めたそうです。
講演ではNHKで紹介されたときの映像を拝見しました。認知症で徘徊する母親とその娘さんとスタッフで、近所の商店街などを廻り、「もし一人で歩いていたら声をかけて宅老所に連絡をください」とビラを配って歩く。事業所だけでは支えきれないお年寄りを抱えると地域にSOSを出し、布団店の店主に夜間の付き添いを手伝ってもらうなど。

「地域とつながる」、よく言われることですが、具体的に何をするのかを考えると頭を抱えます。ひとつひとつの問題を具体的に地域に提示し一緒に考えていく、という下村さんのスタンスは、現実的な方法で得心しました。

高齢者を支える現場の方々の職業倫理や思想、信念を感じることができました。建築の立場からも一緒に考えていけるとよいなと思っています。

下村さんの著書:
九八歳の妊娠―宅老所よりあい物語 [単行本]
下村 恵美子 (著)+谷川俊太郎(詩) 雲母書房 2001年

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