富田林の平屋の住まい お引き渡し
大阪府富田林市にて工事監理を行っていました平屋の住宅のお引き渡しが完了しました。市街化調整区域であったので着工に至るまでの道のりも長く、感慨深いものがありました。
農地の端に建ち、東に石川、金剛山・葛城山を望む場所で、南に願昭寺五重塔、北にPLの塔と、季節や時間によって景色が刻々と変わっていく飽きない場所です。
旧東高野街道から石川側の農地の方に入った場所ですが、旧街道に対しては軒を落としているので低い小屋のような姿です。外壁は昔から使われている素材である焼杉を使用しています。
オープンな外構でモミジとアオダモのゲートを通り玄関にアプローチします。玄関上部のFIX窓は生活の営みを温かく表出させるとともに、中から外を感じられる窓としています。
玄関からリビングに入ると東側の景色を望む大きなFIX窓と南側の畑につながる四畳半の縁側を設けています。景色がよく、庭や畑が広がる場所なので「外とどのような関係を持つか?」というのがテーマになってきます。縁側があり引き込める建具で一体的に開放するという方法が考えられますが、自然豊か故に虫も多く、網戸が必須になってくるので、実際には人の動き的にも視覚的にもあまり開放できません。ここでは東面はFIX窓とすることで視覚的に開放し、出入りは薪ストーブの横と南の畑側に整理しています。その南側には屋根の架かった四畳半の縁側を設けて気候のよいときに屋外を楽しんだり、畑仕事のときに休憩できるような場所としています。
農地と山を望む景色を見ながら料理ができるようにキッチンを配置しています。平屋ならではの勾配屋根と登り梁が感じられる空間としています。国産杉CLTパネル(Jパネル)を使用し、野地板がそのまま仕上げとなり、屋外の軒にも広がっています。軒を深くすることで外壁の焼杉を守ったり、風雨の吹込みを防げるので、窓も設けやすくなり、外との関係を持ちやすくしています。
南と東に窓のある寝室。各面に開口部や通風できる窓がありつつも、開放的なLDKに対して守られた場所としています。
クライアントが茶道をされており、躙り口のある茶室を設けています。縁側を待合い、リビングから見える庭を経由して躙り口に至る経路を露地に見立てています。大きく架けた緩勾配の屋根の一番軒の低い部分が茶室になっています。床の間のある正客側は天井を張っていますが、躙り口側は一部Jパネル素地が見える仕上げととしています。茶道口の襖は京唐紙の支給品が張られています。
来客用の部屋としても想定しています。最近はフローリングのみの住まいも多いですが、やっぱり畳の部屋もいいものです。
玄関脇にあるホビールーム。玄関土間から下足のまま入れるようにしています。自転車を屋内に入れてメンテナンスをしたり、登山やアウトドア用品を整理収納しておくことができます。壁面を有孔ラワンベニヤとしているので、穴にフックをかけたり、DIYで壁面にビスを効かせて壁面も利用できるようにしています。
玄関脇から洗面所まで通り抜けられるWIC(ウォークインクロゼット)。リビング側とWIC側で通じて回遊できるようにしています。経路が増えると面積が増えそうですが、このように通過ができる「部屋」として無駄なくプランニングしています。ほぼすべての扉を引戸としているので、普段は開け放って風通しよく過ごしてもらえます。(玄関引戸には網戸も付けていて風通しよく過ごせます。)この他にシューズクロークもあり収納スペースを多く確保しています。
その他に水回りや外部も紹介したいところですが、別途竣工写真と共にご紹介できればと思います。
南東側から見た外観。地形に合わせて這うように屋根を広げています。稲刈りもちょうど終わった時期でしたが、住宅は四季折々の景色になじみ、日々の暮らしもこの場所でなじんでいけることを願っています。